お世話になっております、行政書士の前田です。
建設業を営む上で、会社の信頼や事業の拡大に欠かせない建設業許可。
この許可を取得するには、クリアしなければならない大事な3つの要件があるのはもうご存じですよね?
1つ目が、「経営業務の管理責任者」
2つ目が、「営業所技術者」
そして3つ目が、「財産的基礎」です。
これら3つが、建設業許可を取得するための、いわば土台となる部分です。
特に「経営業務の管理責任者」は、会社の経営を任せられる人がいるか?という、事業の安定性を証明するための非常に重要な要件です。
「うちの社長が経験豊富だから大丈夫だろう」と安易に考えていると、思わぬ落とし穴にはまることも少なくありません。
今日は、この「経営業務の管理責任者」について、一緒に詳しく見ていきましょう。
そもそも、経営業務の管理責任者って何?
建設業法では、許可の要件として、「適切な経営体制を有していること」が求められています。
これを具現化したものが、この「経営業務の管理責任者(以下、経管)」という存在です。
なぜ、このような特殊な要件があるのかというと、建設工事は、請負契約の履行、資材の調達、下請け業者の管理、そして何より安全性の確保など、多岐にわたる経営管理が不可欠だからです。
もし経営体制が不安定な会社に許可を与えてしまえば、発注者や下請け業者に多大な迷惑をかけるリスクが高まります。
そのため、許可行政庁は、その会社の経営に責任を持ち、豊富な経営経験を通じて事業を適切に運営できる人物が社内にいることを必要とし、厳格に審査するのです。
簡単に言うと、「この会社は、きちんと経営ができる人物が責任者としていますよ」という証明書のようなものですね。
経営業務の管理責任者の要件は?
では、具体的にどんな人が「経管」になれるのでしょうか?
主な要件は、以下のいずれかに該当することです。
1. 役員としての経験〔経営業務の管理責任者〕
建設業の役員(取締役など)として5年以上、経営業務を管理してきた経験があること。
この「役員」というのは、登記簿謄本に記載されていることが必要です。
また、単に名前が載っているだけでなく、実質的に会社の経営方針の決定や執行に関わっていたことが求められます。
2. 役員に準ずる地位での経験〔経営業務の管理責任者に準ずる地位〕
建設業の役員に準ずる地位で、6年以上、経営業務を管理した経験があること。
この「役員に準ずる地位」とは、例えば「部長」や「支店長」のように、役員会への出席はしないまでも、会社の方針決定に深く関与するような立場を指します。
この他にも、「 経営業務の管理経験を体制で満たす場合」などもあります。
〇〇年の業務経験といっても、建設業に関する経験もあれば、建設業を含んだ経験もあります。
かなりややこしく、複雑ではありますが、様々なパターンで経管の要件を満たすことができる可能性はあります。
「常勤」ってどういうこと?
もう一つ、非常に重要なのが「常勤」という要件です。
これは、その会社の営業所に、毎日決まった時間に出勤して、経営業務に専念できる状態のことを言います。
「うちの社長、他の会社の役員もやってるんだけど…」というケースは要注意です。
原則として、経営業務の管理責任者は、他社の役員や、別の事業の個人事業主を兼任することはできません。
これは、二足のわらじを履いていては、建設業の経営に専念できないだろう、という考え方に基づいています。
ただし、例外として、親会社と子会社など、実質的に経営業務に専念できると認められる場合は、兼任が認められることもあります。
このあたりの判断は複雑なので、不安な場合は是非ご相談ください。
経営経験の証明方法
「経管」としての経験を証明するには、様々な書類が必要になります。
特に、「役員としての経験」と「常勤性」をそれぞれ証明する書類を揃えることが重要です。
1. 役員経験の証明資料
このパートでは、「いつからいつまで、どんな立場で経営業務に携わっていたか」を客観的に示します。
≪会社の履歴事項全部証明書(登記簿謄本)≫
取締役や執行役員といった役員として登記されていた期間を証明します。
≪確定申告書の控え≫
会社の事業実態があったことを証明します。
≪経験期間に係る建設業許可通知書、建設業許可申請書≫
≪工事請負契約書、注文書、請求書などの控え≫
役員在任期間中に、実際に建設業の工事を請け負っていたことを証明します。
工事の実績を複数用意することが重要です。
≪組織図や業務分掌規程≫
役員に準ずる地位(例:部長)だった場合に、その役職が経営業務を管理する立場であったことを証明します。
2. 常勤性の証明資料
このパートでは、「その営業所に、毎日出勤して業務にあたっていたこと」を証明します。
≪健康保険証の写し≫
会社の健康保険に加入していることで、その会社に所属していることを証明します。
≪住民票≫
会社の所在地から通勤できる場所に住んでいることを証明します。
≪会社との雇用契約書や社員証明書≫
会社に常勤で雇用されていることを証明します。
※上記の証明資料はごく一部のもので、業務経験要件の内容や常勤性の要件の内容、また許可申請先により異なる証明資料が必要となることがあります。
これらの書類を一つひとつ丁寧に揃えることが、許可申請をスムーズに進めるためのカギとなります。単に経験年数を主張するだけでなく、それを裏付ける「証拠」の積み重ねが重要になるのです。
経管に「もしも」のことがあったら?
「経管」の要件を満たし、無事に許可が取れた後も、安心はできません。
もし、この経管が何らかの理由で欠格要件に該当してしまった場合、どうなるでしょうか?
たとえば・・・
「刑法上の罪を犯して禁錮以上の刑に処された」
「建設業法違反で罰金刑を科された」
「経営する会社が破産した」
などの事態が起こった場合、許可の取り消し対象になってしまいます。
許可が取り消されてしまうと、原則として5年間は再取得ができません。
つまり、その間は許可が必要な工事を受注できなくなり、会社の事業に大きな影響が出てしまいます。
このように、経営業務の管理責任者は、単に許可取得時に必要なだけでなく、許可を維持していく上でも、非常に重要な存在なのです。
欠格要件に関しては、過去のCOLUMNで解説していますので、そちらもぜひ読んでみてください。
まとめ
今回は、建設業許可の3大要件の一つである「経営業務の管理責任者」について解説しました。
常勤性や経験年数の証明、そして許可取得後の欠格要件など、まだまだ複雑な部分もあります。
「うちの会社は大丈夫かな?」
「この経験で要件を満たせるのかな?」
など、少しでも不安なことがあれば、一度専門家である行政書士に相談してみてください。
許可取得への近道は、正確な知識と、適切な準備です。
皆さんの事業拡大を、心から応援しています!
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます!
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たまご行政書士事務所
行政書士 前田 礼央
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