お世話になっております、行政書士の前田です。
今回のコラムは「建設工事の契約」についてです。
安心して、そして正当な利益を得て仕事を進めるために、絶対に避けて通れないテーマです。
「長年の付き合いだから、契約書はなくても大丈夫」
「契約書は形式的なものだから、詳細は読み飛ばしている」
もし、そう考えているとしたら、それはあなたの会社が抱える最も大きなリスクかもしれません。
今回は、建設業法における契約の根幹を定める第18条と第19条の条文から、その真の必要性を深掘りし、あなたの会社を守る「盾」にする方法をお伝えします。
第18条が定める「対等」という名の権利
まず、建設業法第18条の条文を見てみましょう。
(建設工事の請負契約の原則)
建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基いて公正な契約を締結し、信義に従って誠実にこれを履行しなければならない。
この条文は、発注者と請負業者、あるいは元請けと下請けといった力関係が生まれやすい建設業界において、「両者は対等なパートナーである」ことを国が明確に保証している、非常に重要な精神規定なんです。
では、「対等な立場」とはどういうことでしょうか?
それは、発注者の都合だけで一方的な工期短縮を求めたり、元請け業者が優越的な地位を利用して不当に代金を減額したりすることを許さない、ということです。
もし、契約の交渉において、あまりにも一方的で不公正な条件を提示された場合、あなたの会社は堂々と「建設業法第18条の精神に反する」と主張し、公正な条件での合意を求める権利があるのです。
公正さなくして、良い建設工事は成り立ちません。
この条文を交渉の武器として持つ意識こそが、プロフェッショナルとしての第一歩です。
第19条:トラブルを根絶する「命綱」の義務
第18条の精神を、具体的な形で実現するのが、契約の書面化を義務付ける第19条です。
(建設工事の請負契約の内容)
建設工事の請負契約においては、当事者間に次に掲げる事項を記載した書面をもってしなければならない。
この条文は、口約束を厳しく禁じています。
なぜなら、建設工事は金額が大きく、工期も長く、非常に複雑なため、「言った」「言わない」のトラブルが会社の存続に関わる事態に発展しやすいからです。
第19条第1項では、請負契約書に必ず記載しなければならない重要事項を定めています。
これらは全て、将来のリスク回避のために存在するチェックポイントです。
契約書で確認すべき「命綱」の重要事項3選
特に実務でトラブルになりやすい、以下の3点について、あなたの会社の契約書が明確に定めているか、確認してください。
① 請負代金の額と支払方法の明確化
単に金額だけでなく、いつ、どのような条件で(出来高、完成後一括など)、どう支払われるのかを具体的に記載してください。
曖昧な支払条件は、代金回収の遅延や未払いという、会社の資金繰りを直撃する最大のリスクを生みます。
② 工事内容(設計図書含む)と工期の厳密な設定
「〇〇工事一式」で済まさず、作業の範囲、使用材料の仕様、数量まで明確に記載しましょう。
これにより、「これもやってくれると思っていた」という認識の齟齬を防ぎます。
さらに、工期遅延が発生した場合の取り扱い(特に天災や発注者の責による場合)をあらかじめ決めておくことで、不当な違約金の請求から会社を守ることができます。
③ 損害賠償の予定又は違約金に関する定め
万が一、契約違反があった場合の対応について、冷静なうちにルールを決めておくことが重要です。
事前に定めておくことで、トラブル発生時も感情的にならず、迅速かつ合理的に事態を収拾でき、会社の信用を守ることにつながります。
「書面不交付」は法律違反!その重みを知る
第19条の定める書面(または電子契約)での契約は、法律上の義務です。
この義務を怠り、契約書を交付しないことは、単なる商習慣の問題ではなく、建設業法に違反する行為であり、行政指導や罰則の対象となり得ます。
あなたの会社が守り、育ててきた「建設業許可」という信用と看板を、たった一枚の契約書不備で失墜させてはなりません。
契約書の徹底こそが、コンプライアンスを重視する一流の証であり、新規の取引先や金融機関からの評価を高める要因となるのです。
まとめ:契約書の徹底こそが、あなたの会社を強くする!
建設業法第18条と第19条は、皆さんの会社が公正な立場で、安心して、そして正当な利益を確保しながら、本業である建設工事に集中できるようにするための、国が与えた最強の権利と義務です。
過去の契約書を見直し、特に第19条の記載事項が曖昧になっていないかを確認してください。
詳細まで明確に定めた契約書は、あなたの会社の技術力、信用力、そして未来の安全性を保証する、最も実践的な経営戦略です。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます!
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たまご行政書士事務所
行政書士 前田 礼央
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