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【建設業許可29業種の羅針盤⑧】鋼構造物工事

更新日:10月12日

お世話になっております、行政書士の前田です。

今回は、ビルや橋梁の骨組みとなる「鋼構造物工事」の許可について、詳しくご説明いたします。

鋼構造物工事業とは?鋼構造物工事業の「中核」を理解する


鋼構造物工事業の核となる工事は、工場等で加工された鋼材(鉄骨)を現場で組み立て、接合し、一つの構造物として完成させる一連の作業です。

単に部材を運んで並べる作業ではありません。

この業種が最も重要視するのは、部材同士を構造的に一体化させるための接合技術です。

具体的には、建設業法上の定義において、鉄骨工事橋梁工事、そして石油やガスの貯蔵用タンクなど、高度な溶接技術や接合管理が求められるものが含まれます。

特に、建築物の構造耐力上主要な部分を構成する鉄骨の組み立て・接合作業は、この許可がなければ請け負うことができません。

最も複雑な境界線:とび・土工工事業との決定的な違い


多くの建設業者様が判断に迷うのが、とび・土工工事業との区別です。

両者の違いを理解せずに工事を請け負うことは、無許可営業という重大なリスクを背負うことになります。

とび・土工工事業が担うのは、鉄骨工事における「仮設的な作業」や「建方(たてかた)」の作業です。

建方とは、クレーン等で吊り上げた鉄骨部材を所定の位置に仮置きし、仮ボルトで固定して形を整えるまでの作業を指します。

これに対し、鋼構造物工事業が担うのは、構造物の安全性を担保するための「最終的な接合・一体化の作業」です。

≪専門的判断基準:接合方法の「質」で区別する≫

ここでいう「最終的な接合」とは、単なるボルト締めではなく、特に高力ボルトによる本締め、または溶接による接合を指します。

高力ボルト接合
構造耐力上、非常に重要な部分に使われるボルトで、規定のトルク(締付力)で締め付ける作業は、専門的な管理と技術を要し、鋼構造物工事業に該当します。

溶接接合
鉄骨の部材を融かし合わせて一体化させる作業は、品質管理が極めて重要であり、これも鋼構造物工事業の領域です。

皆様が請け負う工事において、現場での溶接作業や高力ボルトによる主要部材の接合が少しでも含まれる場合、「とび・土工」だけでは不十分であると判断されることが大いにございます。

見落とせない「専門工事」との細かな分離


鋼構造物工事業の定義を深く知る上で、さらに注意すべきなのが、他の専門工事との分離です。

例えば、建築一式工事を請け負う際、その中に鉄骨工事が含まれていたとしても、鉄骨の専門工事部分(加工・組み立て・接合)の請負金額が一定額を超える場合は、自社で施工するにせよ、下請けに出すにせよ、必ず「鋼構造物工事業」の許可が必要となります。

また、熱絶縁工事や塗装工事といった、構造物本体の組み立て後に付随する仕上げ的な工事は、当然ながらそれぞれの専門工事の許可が必要であり、「鋼構造物工事業」の範囲外となります。

「鋼構造物工事業」を取得すべき建設業者とは?


この許可の重要性についてはご理解いただけたかと思いますが、では、具体的にどのような建設業者様が、今すぐこの許可の取得に踏み出すべきなのでしょうか?

元請けから「鉄骨建方以外の作業」を求められる業者様

現在、とび・土工工事業の許可のみで、鉄骨の「建方」を中心に事業を展開されている業者様が最も危険な状態にあります。

元請けからの指示や、現場の状況に応じて、仮ボルトを本ボルトに締め替える作業や、現場溶接による接合を求められるケースは必ず発生します。

「これはサービスでやっておこう」「このくらいなら大丈夫だろう」という認識が、即座に無許可営業という大きな法的なリスクを招きます。

元請けの信頼を失い、最悪の場合、処分に繋がります。

少しでも本締め・溶接の可能性があるならば、予防策として必ず取得すべきです。

将来的に「大型の公共工事・民間工事」を目指す業者様

橋梁、ダム、高速道路の標識などの大規模インフラ整備工事や、工場・倉庫といった大型S造建築の鉄骨工事は、非常に高い品質管理と技術力が求められます。

発注者側(特に公共工事)は、当然ながら「鋼構造物工事業」の許可保有を参加要件(入札資格)としています。

この許可は、単に工事を請け負う権利だけでなく、「大規模な鉄骨構造物の安全と品質を担保できる技術力がある」という、市場への強力な証明書となります。

「もっと大きな仕事がしたい」「安定した公共工事の受注を目指したい」とお考えであれば、この許可は未来への必須投資です。

「鉄工所・工場」から現場進出を考えている業者様

これまで工場での鉄骨加工(ファブリケーター)をメインとし、現場での組み立て・据え付けは外注していた業者様が、利益率向上や品質の一元管理のために「自社で現場施工まで請け負いたい」と考えるケースが増えています。

この場合、現場での組み立て・接合作業が必ず「鋼構造物工事業」に該当します。

工場での加工技術とは別に、現場施工のための技術と許可が求められるため、事業の多角化・垂直統合を目指すなら必須の許可となります。

資格・技術者要件から逆算して今すぐ行動を起こす


「鋼構造物工事業」の許可を取得するためには、「営業所技術者」の要件を満たす必要があります。

特に、一般建設業許可を取得する場合、以下のいずれかを満たす技術者を配置できなければ、申請書を提出することすらできません。

指定学科卒業+実務経験
建設、土木、建築などの指定学科を卒業後、一定期間(大卒3年、高卒5年など)の実務経験を有する。

10年以上の実務経験
許可を受けようとする鋼構造物工事について、10年以上の実務経験を有する。

国家資格: 1級・2級建築施工管理技士(建築、躯体)

技術士(建設部門)、溶接に関する資格など、所定の要件を満たす資格を保有する。

資格者の確保や実務経験の証明は、一朝一夕でできることではありません。

皆様が目指す大きな目標を達成するために、まずは自社の社員構成と資格保有状況を徹底的に洗い出すことから、今すぐ着手してください。

まとめ:鋼構造物工事業は、未来への「戦略的投資」です


鋼構造物工事業の許可は、単なる行政手続きではありません。

それは、貴社が社会インフラを支える大型構造物のプロフェッショナルとして、高い信頼と安全性を市場に示すための戦略的投資です。

「難しいから」と後回しにするのか。それとも、「大型案件を掴むために、今、確実な一歩を踏み出す」のか。

この判断が、数年後の貴社の事業規模を決定づけます。

貴社の建設業許可取得に向けて、具体的な要件チェックや必要書類の準備について、ぜひ一度、私ども行政書士にご相談ください。

今回も最後までお読みいただきありがとうございます。

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たまご行政書士事務所
行政書士 前田 礼央
メールやLINEでもお気軽にご連絡ください!
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