お世話になっております、行政書士の前田です。
建設業許可を取る、あるいは支店を出す際に、必ず出てくるのが「令3条の使用人」というキーワードです。
なんだか難しそうな名前ですが、これは本社以外の営業所を任せている責任者のことを指します。
「そんなの、うちの支店長でしょ?」と思うかもしれませんが、実はただの肩書だけではダメなんです。
ここには、建設業法が定める重要な役割とルールがあります。
令3条の使用人はどういう立場の人間?
「令3条の使用人」とは、正しくは『建設業法施行令3条に規定されている使用人』といいます。
令3条の使用人は、本社(主たる営業所)以外の営業所(従たる営業所)において、その代表者として請負契約の締結や工事の運営に責任を持つ人です。
法的には、「請負契約の締結に関する権限」、「工事の請負代金の請求、受領に関する権限」、「技術者の配置や、資材・下請け業者との契約に関する権限」、などを持つことが求められます。
簡単に言えば、その営業所のすべての業務を任されている人ということです。
役員じゃなきゃダメ?
令3条の使用人は必ずしも会社の役員(取締役など)である必要はありません。
部長や所長といった役職でも、上記の権限を会社の代表者から正式に委任されていれば、令3条の使用人として認められます。
誰でもなれる?令3条使用人の要件
結論から言うと、令3条の使用人になるために、特別な資格や実務経験は必要ありません。
重要なのは「常勤」と「委任」です。
≪常勤していること≫
その営業所に、勤務時間中ずっと勤務していることです。
他の会社の役員や社員を兼務することはできませんし、2つ以上の営業所・支店で令3条の使用人となることもできません。
≪その営業所の代表者として、責任ある業務を行うこと≫
単に営業所にいるだけでなく、実際に請負契約の締結など、会社の業務執行に直接関わる必要があります。
そのため、それらの権限が与えられていることが必要になります。
気をつけるべきこと
令3条の使用人を置く際、特に注意すべき点がいくつかあります。
実態が伴っているか?
申請書類上は「令3条の使用人」と記載されていても、実際にはその営業所に常勤していなかったり、代表者としての権限がなかったりすると、許可が取り消される原因になります。
履歴に注意!
破産者で復権を得ない者や、過去に建設業法違反などで行政処分を受けているなど、欠格要件に該当する人はなれません。
営業所技術者との兼務はできる?
令3条の使用人は営業所技術者と兼務することが可能です。
ただし、兼務できるのは同一の営業所に限ります。
例: 東京支店で、令3条の使用人と、その支店の営業所技術者を兼務することはOK。
例: 東京支店の令3条の使用人が、大阪支店の営業所技術者を兼任することはNG。
これは、どちらの役職も「常勤」が必須だからです。
一人の人間が同時に2つの場所にいることはできませんからね。
【重要】令3条の使用人の経験は、将来の「経管」の経験になる!
ここが、特に重要なポイントです。
令3条の使用人として働いた経験は、将来、「経営業務の管理責任者(経管)」になるための経営経験として認められます。
経管の要件:経管になるには、許可を受けようとする建設業に関して、経営業務の管理責任者としての経験が5年以上必要です。
令3条の使用人としての経験は、この「経営経験5年」の要件を満たすための実績になります。
つまり、最初は支店の代表者として経験を積み、将来的に経営幹部として会社全体の経営を担う立場になるキャリアパスがある、ということです。
まとめ
「令3条の使用人」は、ただの肩書ではなく、本社以外の営業所の代表者として、請負契約などの重要な業務を担う、責任ある立場の人です。
必ずしも役員である必要はなく、部長や所長でもOK。特別な資格や経験は不要。
「常勤」と「代表者からの委任」が重要。
同一の営業所であれば、営業所技術者との兼務も可能。
この経験は、将来的に経管になるための経営経験としてカウントされる。
許可取得後も、もし営業所を新設したり、担当者が変わったりした場合は、きちんと変更届を提出することが大切です。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます!
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たまご行政書士事務所
行政書士 前田 礼央
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