お世話になっております、行政書士の前田です。
建設業許可の取得は、事業の信用を高め、仕事の幅を広げるための最重要ミッションです。
その申請要件の中で、最も根幹となるのが、各営業所に配置する「営業所技術者」の存在です。
この「営業所技術者」の要件を正確に理解できなければ、許可申請は不許可となります。
逆に、ここをクリアすれば、許可取得はぐっと近づきます。
本記事では、この許可申請の生命線である「営業所技術者」について、その基本的な役割と絶対要件を解説いたします。
「営業所技術者」とは、どんな存在か?
建設業許可を取得するためには、すべての営業所に、許可の根拠となる技術的な能力を持った人物を常勤で配置することが、建設業法(第7条、第15条)で義務付けられています。
この、営業所に配置が義務付けられた人物こそが、「営業所技術者」です。
営業所技術者(特定建設業許可の場合は、特定営業所技術者)
役割:建設工事の請負契約の締結及び履行の業務に関する技術上の管理をつかさどる者
この定義が示す通り、営業所技術者とは、貴社がその建設業種の工事について技術的な責任と能力を持つことを証明する、許可申請のキーパーソンです。
重要なのは、この人が申請の段階で実態として配置されていなければ、許可は絶対に下りないということです。
「営業所技術者」になるために満たすべき2つの絶対要件
「営業所技術者」(または特定営業所技術者)として行政庁に認められるために、許可申請前に以下の2つの絶対要件を同時にクリアする必要があります。
要件その1:技術的な資格・実務経験(「技術上の管理能力」の証明)
これは、営業所技術者が、その許可を受けようとする建設業に関して、請負契約の技術的な管理をつかさどるに足る能力があることを証明する要件です。
一般建設業:その工事の主任技術者となることができる資格・経験を有していること。
特定建設業:その工事の監理技術者となることができる、またはそれに準ずる極めて高い技術力があること。
この技術的な要件を証明するための書類の準備と実務経験の積み上げが、許可申請における最も重要な準備となります。
要件その2:常勤性
営業所技術者は、その職務に専念することが求められます。
これは、営業所技術者が、当該営業所に常時継続的に置かれ、原則として他の職務(他の会社の役員や他の営業所の技術者など)を兼任しない状態にあることを意味します。
具体的には、健康保険証や雇用契約書等で貴社との直接的かつ恒常的な雇用関係を証明し、さらに他の業務と兼務していないことを宣誓する必要があります。
「常勤性」の証明は、行政庁が厳しくチェックする最重要ポイントの一つです。
営業所技術者の具体的な「職務」を理解する
許可取得を目指す上で、この営業所技術者が工事現場の指揮官ではないという前提を明確に持ってください。
営業所技術者が担うのは、まさに法令上の定義通り、営業所という場所で技術的な管理をつかさどる職務です。
請負契約の技術的な管理
建設工事の請負契約を締結する際の、技術的な内容の確認、助言、指導。
営業所の技術的な指導
許可取得後、貴社全体の技術水準の維持と向上に関する指導。
彼らの職務は、貴社の技術的な信頼の「入り口」を固めることにあります。
原則として、彼らは現場に常駐して指揮を執る人(配置技術者)ではない、という前提で配置計画を立ててください。
【重要!】許可取得後も続く義務:交代・欠員時の緊急対応
「常勤性」は、許可申請時だけでなく、許可を受けた後も継続して満たし続けなければならない絶対的な義務です。
万が一、営業所技術者が退職、病気、あるいは他の部署への異動などで欠けてしまった場合、貴社の許可は要件不備の状態となります。
これは、事業継続に関わる重大なリスクです。
1. 欠員・交代時の対処法と期限
営業所技術者が欠けた場合や、交代が必要になった場合、速やかに新たな後任者を選任し、配置しなければなりません。
この手続きは、事由が発生した日から原則として2週間以内に、行政庁へ「変更届」として提出することが義務付けられています。
2. 期限を過ぎた場合の重大なリスク
この2週間という期限を過ぎても後任者が配置されない場合、行政庁は「許可要件の欠如」とみなし、指導、営業停止、または最悪の場合、建設業許可の取り消しという行政処分を下す可能性があります。
許可を取得するだけでなく、いかに安定して維持していくかという視点が、事業計画には不可欠です。
まとめ:許可取得への大切な一歩
「営業所技術者」の要件は、建設業許可申請における最も厳しく、最も重要な絶対要件です。
技術的な要件と、常勤性の証明に漏れがないか、そして取得後のリスク対応体制が整っているか、今すぐ貴社の体制と保有資格をチェックしてください。
さて、法令の原則は、営業所技術者は「専任」であることです。
しかし、ここで一つの疑問が生じるはずです。
「我が社の営業所技術者は、許可取得後に、現場の主任技術者や監理技術者を兼任することは一切できないのだろうか?」
建設業界の生産性向上や人手不足を背景に、この「営業所技術者と現場技術者の兼務」に関するルールは、最新の法改正で大きく変わりました。
次回は、この疑問と法改正、「営業所技術者の専任性」の原則と、兼務が認められるための厳しい例外条件について、具体的な金額基準や新制度を含めて、解説してまいります。
今回も最後までお読みいただきありがとうございます。
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たまご行政書士事務所
行政書士 前田 礼央
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