お世話になっております、行政書士の前田です。
前回は、許可取得の土台となる「営業所技術者」の基本と要件について解説しました。
今回は、許可取得後の現場運営において最も重要で、かつ最新の法改正で大きく変わったルールに焦点を当てます。
主任技術者・監理技術者の最新配置ルール
建設業許可を取得しても、現場で技術者配置のルールを破れば、それは法令違反であり、営業停止や許可取り消しという重大な行政処分につながります。
現場に配置する配置技術者(主任技術者・監理技術者)の「専任」ルールは、人手不足や生産性向上の観点から、この数年で大きく変更されました。
本記事では、この現場運営の生命線となる配置技術者の「専任」と「兼務」について、最新の法令基準と、特例を解説します。
【大前提】配置技術者とは?営業所技術者との決定的な違い
まず、前回解説した営業所技術者と、今回の主役である配置技術者の違いを明確にしましょう。
≪営業所技術者≫
配置場所:営業所
主な役割:契約の技術管理、営業所の技術基盤維持
≪配置技術者≫
配置場所:工事現場
主な役割:現場に常駐し、施工の技術上の管理を行う
配置技術者(主任技術者または監理技術者)は、まさに現場の指揮官であり、工事の品質と安全を担う責任者です。
その役割の重要性から、法令による規制が非常に厳しく設けられています。
「専任」の境界線!請負金額の最新基準
配置技術者を「専任」としなければならないかどうかの境界線は、工事一件の請負金額によって明確に定められています。
現在、元請・下請を問わず、以下の工事については、その技術者を「専任」で配置することが原則として義務付けられています。
≪建設業法26条第3項≫
公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事で工事一件の請負金額が4.500万円(建築一式工事の場合は9,000万円)以上のものについては、主任技術者又は監理技術者は、工事現場ごとに、専任の者でなければならない。
この金額以上の工事では、技術者は当該工事に常時継続的に置かれ、原則として他の現場の職務を兼任することは認められません。
この「専任」の原則が、現場運営における最も重要な鉄則です。
【朗報】人手不足を救う!専任を要する工事でも兼務できる「特例1号」
「4,500万円以上の工事は兼務不可」という原則は厳しいものですが、建設業界の生産性向上に対応するため、最新の法改正で画期的な例外規定が設けられました。
それが「専任特例1号」です。
これは、専任が必要な工事であっても、以下の厳しい要件をすべて満たせば、配置技術者を2現場まで兼務できるという、まさに人手不足を救うための制度です。
①請負代金の額が1億円未満(建築一式工事は2億円未満)の工事
②工事現場間が1日の勤務時間内に巡回可能、かつ工事現場間の移動時間が概ね2時間以内
③下請次数が3を超えていないこと
④監理技術者等との連絡その他必要な措置を講ずる者を工事現場に置いていること
⑤工事現場の施工体制について、情報通信技術を利用する方法により確認する措置を講じている
⑥人員の配置計画書を作成し、工事現場毎に据え置く(作成等は電磁的方法によることも可能)
⑦工事現場の状況を確認するために必要な映像及び音声の送受信が可能な情報通信機が設置され、かつ通信を利用することが可能な環境が確保されていること
この特例を活用できるかどうかは、貴社の現場体制を大きく変える可能性があります。
ただし、要件が一つでも欠けると法令違反となるため、制度の趣旨を正しく理解し、慎重に適用しなければなりません。
専任を要しない工事における、主任技術者の「近接兼務」ルール
「4,500万円未満の工事なら自由に兼務できる」と思ったら大間違いです。
たとえ専任を要しない工事であっても、主任技術者は「その職務を誠実に遂行できる範囲」でしか兼務できません。
行政庁の運用マニュアルなどでは、現場間の距離が離れすぎている場合や、兼務する現場の数が多すぎる場合は、技術者の職務遂行が不可能と見なされ、専任義務違反として指導の対象となります。
兼務可能な現場の数は、最大5件程度が目安とされることが多いです。
ただし、現場間の距離や工事内容によっては、3件でも多すぎると判断される場合があります。
金額にかかわらず、現場管理が疎かになるような無理な兼務は、絶対に避けるべきです。
まとめ:貴社の現場運営は法令に適合していますか?
今回の解説で、現場の配置技術者の専任・兼務ルールが、単なる常識ではなく、法令に基づいた厳格なルールであることがご理解いただけたかと思います。
特に「専任特例1号」は大きなチャンスですが、その活用には専門知識に基づく準備と手続きが不可欠です。
最新のルールに適合していない現場運営は、いつ許可取り消しになってもおかしくない大きなリスクを抱えています。
不安を抱えたまま、現場を回す必要はありません。
私たちは、貴社の現場体制が最新の法令に適合しているか、そして特例を最大限活用できるかについて、具体的なアドバイスを提供いたします。
現場のルールを理解した上で、いよいよ次回は営業所技術者の兼務に焦点を当てます。
「営業所技術者が現場に出られる例外的な道とは?」最新の制度を解説し、貴社の技術者を最大限に活かす方法をお伝えします!
今回も最後までお読みいただきありがとうございます。
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たまご行政書士事務所
行政書士 前田 礼央
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